JWP 97.8.17 ピュアハートフェスティバル後楽園大会(昼の部)



開場は12時をちょっと回った頃。すでに青いビルの外まで列が伸びている。そのまま並ぶのをせず、エレベーターがすくのを待って5階に上がったため、人のごったがえす売店には近寄れず。

自席に着く。なんか特殊ファンの連中の表情が暗い。榎本カメラマンが目に涙をためてリングサイドに入ってくる。まさか・・・・

13時になっても始まる様子はなし。この時点での客の入りは8割程度。やがて千葉リングアナが入ってくる。ヤマモの姿はなし。いつもの「試合開始に先立ちまして、全選手入場式を行います!」のアナウンスの代わりに「みなさまに残念なお知らせがあります。」ざわめく場内。15日の事故すら一般の人の知るところではないから仕方がない。「15日・広島大会の試合中の事故によりまして入院しておりましたプラム麻里子選手が16日午後6時半、脳挫傷および硬膜下出血のため、帰らぬ人となりました。」客席から「えーっ!」という叫び、「なんでだよーっ」という声。すすり泣く声も。「ここで、プラム麻里子選手追悼のため、1分間の黙祷を行います。」今日出場の全選手(アジャ、府川、元川含む)が南側客席の前に並び、黙祷。こちら(北側)からは選手の顔は見れなかったが、泣いている選手もいたようだ。会場が暗い雰囲気に包まれる。

選手が退場し、カードの発表。昼の部のメインに出るはずだったプラムの代わりにはコマンド・ボリショイが入ることに。


第1試合 コマンド・ボリショイ&元川恵美 vs 大隅沙理&久住智子

久住とコマンドでスタート。久住強烈なドロップキックを見せる。悲報の影響は表面上は見られない。元川出る。久住、大隅に急角度のバックドロップ、コーナーからスプラッシュ、ラ・マヒストラル。しかしいつものような声が出ていない。元川がボディスラム。コマンドがムーンサルトの体勢に入ると、起き上がった大隅、4つんばいになって逃げる。ここで初めて会場からも笑いが。大隅得意の「あー!」で気を逸らせる作戦はコマンドには通じず。ロープワークから回転エビ固め、大隅「おーっとっとっととお」でこらえ、久住にタッチ。久住はコマンドにダブルアーム式背骨折り2発。コマンドがロープに走るとそれを捕らえて初公開の風車式背骨折りも。フィニッシュを狙った雪崩式ダブルアームスープレックスは時間がかかりすぎてフォールには行けず。コーナーを背に両手を挙げて「いくぞ~」と気合を入れる久住。するするっとコーナートップに上っていた大隅がその手にさわり、「チェンジチェンジ。」レフェリーもこれを認め、久住は不承不承控えに下がる。会場爆笑。大隅コマンドにヒザを入れ、肩車に捕らえる。久住がコーナーから飛ぼうとするが、これは元川が阻止。コマンドはその間に大隅にミステリオ・ラナを狙うがこれは失敗。しかしうまく着地するや、掌底一発で大隅をフォール。

コマンド(13分38秒 片エビ固め)大隅


第2試合 格闘技戦ルール
天野理恵子 vs 前川久美子(全女)

特別レフェリーはバトラーツの島田裕二。試合形式は3分5ラウンド、休憩1分。決着付かない場合1ラウンドのサドンデス延長戦。それでも決着が付かない場合は引き分け。勝負はKO、TKO、ギブアップ、レフェリーストップ、セコンド(両者3人まで)のタオル投入のみ。フリーノックダウン、フリーエスケープ。グラウンドで試合が膠着した場合、レフェリーがブレークし、リング中央からスタートさせる。反則はかみつき、脊髄への攻撃、ダウンした相手へのケリ、顔面パンチ・掌底などの他、ロープエスケープ以外にロープをつかむことも。ニードロップは可。

天野のいでたちは「GAEA-改」のような黒のセパレート、素足にレガース。セコンドには通常通り宮口、本谷、奥津。前川はいつも通りにレガース。セコンドには伊藤とボブ矢沢。

<1R>
千葉リングアナ、リングアナの職務の傍ら天野にアドバイス。天野がキックで先制。タックルであっさり倒し、上に。前川、こういう形式の試合で上に乗られることの危険性がわかってないのか、いつでも返せると思っているのかラウンド制だからねばれば何とかなると思っているのか抵抗なし。天野は上から機を伺う。緊張が走る。天野起き上がろうとした前川の首を捕らえてフロントネックロック。前川エスケープ。天野再びタックルで倒す。前川ネックロック。天野はこれを抜いて腕ひしぎ十字固めに。前川必死にこらえ、そのままゴング。

<2R>
前川前蹴りで間を詰めていく。天野足を取って蹴り返す。前川、天野を捕まえてネックロック、天野エスケープ。天野組み付いて、前川のバランスを崩して倒し、横四方に取る。前川逃げる。天野背後からアームロックねらい。ロープに近くブレークが告げられる。前川またも前蹴り。天野倒すが、前川体力を生かして上に乗ったまま真ん中に持って行く。天野ガードポジション。伊藤のアドバイスにいちいち「ハイ!」と答える前川。余裕のなせる業か。天野は下から十字ねらい、前川さばく。天野の足があいているのを見て伊藤が「足取れ!」前川「ハイ!」素直に足を取る。しかしこれは当然エサ。天野はスルリとかわして体をひねり、バックからスリーパー。決まっているようだ。前川動けない。しかしここで無情のゴング。

<3R>
今まで通り行けば勝てるかも、少なくとも引き分け?と思っていたらこのラウンド開始と同時に天野は奇襲のドロップキック。なぜ?前川当然のごとくかわし、立ち上がる天野の側頭部にミドルキック。天野ダウン。9カウントで立ち上がるが、前川そこにねらいすましたハイキック。天野ふたたびダウン。島田レフェリーはカウントを数え始めるが3でストップ、前川のKO勝ちを宣した。

前川(3R 27秒 KO)天野

前川、天野を待たずそそくさと控室へ。天野しばしあってようやく立ち上がるが、さすがにダメージ大きそう。しかし天野のがんばりが暗いムードを吹き飛ばしてくれたのは確か。


第3試合 尾崎魔弓 vs 府川由美(全女)

プラムの直接の死因ではないにせよ、引き金となるライガーボムを打ってしまった尾崎、その精神状態が心配されたが、とりあえず入場時にそういったそぶりは一切なし。むしろ府川の方がやはり緊張気味。府川、試合前の握手を拒否、キックで先制攻撃。しかしドロップキックはかわされ、尾崎に場外に連れ出される。鉄柵に2度ぶつけられた後客席にも投げ込まれる。エプロンまで戻ってきた府川、近寄る尾崎に「下がれよ!」と気の強いところを見せる。尾崎はしかし入ってきたところをすぐ捕まえ、いつものようにロープに固定して顔を踏みつける。ブレーンバスターからアームストレッチ、府川抵抗できない。キャメルクラッチで固め、髪を引っ張り、足にかみつくなどやりたい放題の尾崎。しかしロープワークから逆転のフェースクラッシャー2連発を放った府川はまずキャメルクラッチでお返し。同じように髪を引っ張る。府川がロープに振ると尾崎が今度はランニングネックブリーカードロップ。珍しいエースクラッシャーから府川の顔面へドロップキック3連発。府川は場外転落。尾崎はエプロンを走ってトペ・コンヒーロ。府川かわして逆にコーナーからプランチャ。尾崎を客席に叩き付ける。リングに戻り、府川はコーナーからミサイルキック2連発。ドロップキック、スイングDDT。尾崎はジャーマン2発、雪崩式ブレーンバスターでカウント2.5。尾崎テキーラねらい、府川ブロック、裏拳もかわしてビクトル投げからヒザ十字。これに会場が反応する。しかしこれは府川ももとから得意な動き。尾崎はロープへ。府川は尾崎をコーナートップに上げ、雪崩式のビクトル投げから再度ヒザ十字。尾崎またロープに逃げる。府川スプラッシュ、尾崎は足を出して受け止める。パワーボムは府川が未然に防ぐ。しかしこの瞬間、会場に何ともいえない雰囲気。尾崎ヒザ蹴りを入れる。府川これを受け止めてフィッシャーマンズスープレックス、カウント2。ミサイルキック2連発を入れ、今度はサブマリナースープレックス。これもカウント2。立ち上がった両者、張り手合戦。府川の張り手をかわしテキーラの体勢に。府川一旦これを逃げるが、もう1回転させて尾崎はテキーラサンライズに。3カウント。

尾崎(10分28秒 テキーラサンライズ)府川



ここで休憩が入るが、休憩後のインフォメーション・コーナーはなし。


第4試合 キューティー鈴木&アジャ・コング(全女)vs 福岡晶&本谷香名子

キュー&アジャが入場すると「美女と野獣!」の声がかかる。ようやく雰囲気もいつもどおりになったか?キューティーは福岡、本谷の両者と握手。アジャは握手拒否。しつこく握手を願う本谷。福岡「やめなよ」と制止するが、本谷あきらめず、ついに握手してもらう。「ならば」と福岡も握手に行くが、アジャは福岡の手にツバ。キューティー、アジャに「お先にどうぞ」。アジャ「自分が?」そこに福岡と本谷がダブルドロップキック。本谷一人残りドロップキック。アジャ倒れない。もう一発。やはり倒れない。「上(コーナー)からやってみい!」しかしそこに福岡が背後からドロップキック。本谷も正面から合わせてようやく倒す。アジャキューティーにタッチ。福岡も出る。福岡、キューティーに足4の字。アジャ、キューティーに「ひっくり返せ!」と叫ぶ。キューティーができないと見るや自ら出ていって、2人まとめてひっくり返す。苦悶する福岡。アジャは福岡に逆エビ。福岡「カナコ、カナコ」と助けを求める。福岡組、場外でキューとアジャをぶつける。しかし当然ダメージを負ったのはキューのみ。アジャ、福岡を鉄柵に振る。鉄柵あえなく壊れる。さらにイス、南側階段を仕切る金属板を福岡に投げつける。先に戻るアジャ。福岡はイスを手にちょっとキレたような表情で戻ってくる。スゴーがイスを取り上げると、そこにアジャの灯油缶。キューティーvs本谷、本谷がスクールボーイからアキレス腱固め、キューティー悲鳴。本谷さらに4の字。福岡もニークラッシャーでフォロー。キューティーは福岡にDDT、キューティースペシャル。キューティーが福岡をコーナーに振る。福岡難なくコーナーで身を翻す。しかしそこにまたアジャの灯油缶。福岡場外転落。キューティープランチャ敢行も誤爆。本谷が逆にプランチャ。リングに戻り、福岡はキューティーにタイガードライバーの体勢。キューティー必死にブロック。福岡自らロープに飛ぶ。そこにまた灯油缶。今日はいつもより多く使ってないかい?アジャはさらに灯油缶を持ってコーナーに上る。キューティーが福岡を捕まえる。アジャダイブ。しかし福岡が逃げ、灯油缶はキューティーに誤爆(というより、最初からキューティーのいる位置までアジャは飛んでいたような)。本谷、このスキにキューティーにカナ・クラッチ。2カウント。アジャが本谷にスプラッシュを浴びせようとするが、本谷かわしてセントーン7連発。カウントは2。福岡出るがキューティーのフットスタンプをくらう。アジャも続くがこれはかわす。キューティーすかさずジャーマン。コーナートップに上る。福岡雪崩式パワースラムを狙うが空中でつぶされる。アジャ再びコーナーへ。「ちゃんと押さえとけ!」「逃がすもんか!」と叫んで福岡についにダイビングフットスタンプ炸裂。のたうち回る福岡。キューティーが片エビに固めるが、本谷が辛うじてカット。アジャ、さらにコーナーからスプラッシュ。そしてダイビングエルボー。これは福岡かわす。しかしアジャはひねりの効いたバックドロップで追撃、コーナーに上げてアピールたっぷりの雪崩式水車落とし。福岡何とかこれを回転エビ固めに切り返す。ここで本谷がコーナーからダイビングセントーンをアジャに。これはいい機転。さらにフットスタンプでお膳立て。そして福岡が自分の腹を押さえながらもムーンサルトフットスタンプ!キューティーがカット。本谷、アジャにカナ・マヒストラル、カウント2。再度のダイビングセントーンは自爆。キューティーが出、本谷にだるまジャーマン、カウント2で本谷返す。キューティーは本谷をコーナーに上げて雪崩式バックドロップ、これも2で返す。キューティーミサイルキック、本谷かわして福岡にタッチ。福岡ムーンサルトプレス、合体式タイガードライバー、しかしこれもカウントは2。福岡&本谷、2人で同じコーナーに上がってダブルのミサイルキックを放つが、キューティーはこれをかわす。アジャがそこに入って2人まとめてラリアットでなぎ倒す。キューティーが本谷にドラゴンを狙うが、すっぽ抜けて投げっ放しジャーマンぽくなる。アジャが福岡をエプロンで押さえる間に、キューティーはコーナートップに上り、本谷が立ち上がるのを待って延髄ニー。これで長~い試合にケリ。

キューティー(23分41秒 片エビ固め)本谷

アジャと福岡が腹を押さえ、本谷が頭を抱えて担がれて帰ってゆくのに、キューティーはぜんぜんどこも痛そうじゃない。やはり鉄人か。関西がいつのまにか本部席に来ていたが、特にアジャに対するアクションなどはなし。


第5試合 デビル雅美&キャンディー奥津 vs コマンド・ボリショイ&宮口知子

デビルは見慣れないガウンとコスチューム。新調したのかな?入場と同時に手を挙げて観客の歓声に応える従来のポーズ。もうこの期に及んで「精神的に」どうのこうの言ってられない、ということだろう。試合はまずコマンドの鼻にデビル&奥津が攻撃。コマンドも相手の鼻をつかんでやり返す。コマンドがロープ渡りやろうとすると、デビルがロープを揺らして妨害。それをさらに宮口が止める。結局成功を許してしまったデビルはコマンドが着地を決めた瞬間に「なんだ、そのうれしそーな顔は?」と因縁。さらに「奥津!意地でもこっち連れてこい!」とゲキ。奥津がその通りコマンドをコーナーまで運ぶと、ロープに振って天龍式のすくい上げパワーボム。コマンドこれをウラカン・ラナに切り返す。カウントは2。宮口出る。デビルにタックル。デビル倒れない。それどころか宮口を捕らえてパワーボム。起き上がったところにラリアット。さらに奥津もミサイルキックで続く。宮口は奥津にジャンピングボディシザースドロップ、デビルにはブラックバスターを狙うが上がらず。ラリアットをくらう。奥津ソバット、宮口これをかわしレッグラリアット3連発。そしてブラックバスターを狙うが奥津はエビ固めに切り返す。デビルが入り、ラリアット。しかしパワーボムはつぶされる。宮口は奥津に雪崩式ブラックバスター。奥津「やめてやめて!」落ちた奥津にコマンドがムーンサルト。しかし奥津は足を突き立てる。コーナーに帰りデビルにタッチしようとするが、デビルはダメージのためか場外に落ちておりタッチできず。

奥津「デビルさあ~ん」
デビル「奥津、ごめん。」

コマンドは奥津の顔面に掌底、カウント2。さらにムーンサルト、これもカウントは2。奥津、ソバットで反撃、そして倒れ込むようなラリアット。ジャーマン5連発。デビルが回数を数える。コマンドはウラカン・ラナでピンチ脱出、宮口が飛び込み様に延髄蹴り。しかしレッグラリアットはコマンドに誤爆。デビルはコマンドにライガーボム。宮口必死のカット。合体パワーボムもカウント2。コマンドもピコバスターホールド、掌底を返そうとするが、デビルこれを受けず、再度のライガーボムでピン。

デビル(13分14秒 エビ固め)コマンド

メインが終わる頃には、いつもの会場の風景と同じような感じもしたが、選手たちの頭から悲報が離れるわけもなく、やはり「よく試合ができた。」この一言に尽きる。



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