JWP 97.10.18 選手会主催「愛がいっぱい」




JR中央線豊田駅からまっすぐ北へ歩いて約15分。コニカ運動場内の体育館が今日の会場。入り口に“JWP 「愛がいっぱい」会場”という貼り紙。そういうサブタイトルが付いていたのか。開場予定の17時から少し遅れて入場開始。入場時、すべての観客にスタッフから「選手からです。」と小さなビニール袋が渡される。中にはプラムのプロマイド2枚と選手直筆(私のは天野)の「本日はありがとうございました」のメッセージ。ちょっと暗い体育館の中に入ると、真ん中に設置してあるリングがプラムのコスチューム(10着くらい?)、写真パネル(週プロ、週ゴン提供)、その他の遺品、花で作られた「まりこ」の文字で飾られていた。着る主のいなくなったコスチュームというのは見るからに物悲しい。ファンが自由に書き込めるメッセージボードもリングのそばに設置してある。通常の興行とは違い、売店などは一切なし。

18時前にはリング上から想い出の品を撤去。若手も、キューティーも、関西も、デビルも、そして尾崎も、さらには今日会場を訪れた奥津・外山の2人も黙々と片づけ作業。数分後には通常のリングに。

今日の観客は10/10の後楽園大会で募集された200名のファン限定。リングの周りを囲むように、こじんまりとイスが設置。「ビデオ撮影が目的」ということだったが、見る限りビデオはいつものようにスタッフがホームビデオ1台で2階から撮ってるのみ。(販売は10月30日から、会場で、だそうです)

18時20分、入場式開始。入場の音楽はいつものとは違い、懐かしの「Heartbeat」(by ワム!)。今日だけは(おそらく)尾崎も入場式から参加。全11選手がお揃いのオロナミンCブルゾンでリング上に揃った。(今日は大日本勢の参加もなし)

全選手を代表してデビルがあいさつ。「本日はお忙しいところお集まりいただいてほんとうにありがとうございます。麻里ちゃんが逝ってから2ヶ月、忘れられるわけもないのだけれど、想いをなんか形に残したくて、選手会が動き出しました。私たちプロレスバカで、ほんと何にも知らなくって、たくさんの人に手伝っていただきました。この体育館も、コニカの方に私たちの想いを伝えると、ほんとうに快く貸してくださって、週プロ、週刊ゴングの方からも写真の提供をいただきましたし。それからスタッフの方、そして今日来ていただいたファンの方々、感謝しています。」と。

選手退場後、初めて今日のカードが発表される。第1試合は通常のタッグマッチだが、第2試合は2フォールカウントマッチ、そしてメインは全員参加によるオンリーギブアップバトルロイヤル。いずれもJWPならではのものであり、かつプラムが名を挙げた試合形式である。


第1試合 福岡晶&大隅沙理 vs 久住智子&本谷香名子

大隅、序盤からサリーちゃんOXを出すが、久住に逆襲される。(久住も「エックス!」と叫ぶ)しかし福岡とダブルのサリーちゃんV、そして単独のサリーちゃんVは成功。調子に乗ってスーパーサリーちゃんVに行こうとするが、久住&本谷のダブルインパクト(本谷はドロップキック)を食らう。福岡も救出に入ろうとするが、本谷のセントーン、そしてファンタスティックフリップを食らってしまう。最後は大隅に対角線コーナーからダブルのダイビングヘッドバットで本谷が大隅をピン。

本谷(16分29秒 片エビ固め)大隅


第2試合 2フォールカウントタッグマッチ
尾崎魔弓&天野理恵子 vs コマンド・ボリショイ&宮口知子

久々の2フォールカウントマッチ。これレフェリー(この試合はテッシースゴー)も大変そうだなあ。見てる方は最初の2、3の動きで慣れちゃうけど。簡単なホイップからの押さえ込みでも2カウントギリギリ。回転技なんてくらうと味方のカットなしには2以内で返すのは困難。終盤、尾崎の裏拳とコマンドの掌底がそれぞれパートナーに誤爆。フラフラの天野、客の「後ろ!後ろ!」という声に気づき、自分の後ろでやはりフラフラしていた宮口を捕らえ、得意の飛びつき逆十字のような入り方から後方回転エビ固めに丸め込み、2カウント奪取。

天野(12分39秒 後方回転エビ固め)宮口


ここで、リング上にイスを持ち込んで、関西とキューティーがプラムの想い出を語るミニ・トークショー。司会は千葉道也リングアナ。バックに流れる音楽はプラムの「Gジャン・シンデレラ」。
まずは2人がジャパン女子のオーディション~入団の想い出から。
千葉「お2人はプラム選手とはもうどのくらいの付き合いになるんでしょうか。」
関西「ジャパン女子って団体の旗揚げオーディションの時に会ってから、そやね、もう12年になる。あの時、オーディションもすっごい数多くって、5回ぐらいに分けてやったんだけど、私と麻里子は同じ回で、同時に合格して。」
キューティー「私がオーディションに受かった時に、向こうから『受かったの?』と声掛けてくれて。それでいろいろ場所とか教えてくれたりして。その時はなんてやさしい人だろう、って思いました。」
千葉「その時は、ですか。(笑)そういえばプラム選手は94年に行われたトークショーで『ファイティングドールズ時代は実は仲が悪かった』と言ったようですが。」
キューティー「うーん、仲が悪いっていうか、今みたいに(キューティーは常に「今」と言っていた)話することもなかったし、一緒にカラオケで遊ぶなんてこともなかったな。」
千葉「関西選手はプライベートでもずっと仲がよかったようですが。」
関西「麻里子とはね、特に仲がよいっていうか、気の合う存在、飲み友達って言うかな。他の代の同期と違って、一期生のこの4人はアブないくらい仲良かったし。」
千葉「関西選手はさっき飾ってあった写真でも、くっついてるのが多かったですね。」
関西「麻里子の癖やねん。写真撮る時、こうピタッとくっつくの。」
千葉「まさに『誰からも愛される』という感じですね。」
関西「というより、麻里子が『誰をも愛する』って感じかな。」
千葉「他にプラム選手のエピソードを何か。」
関西「語りきれんくらいたくさんあるんやけど、まあ、レスラーってみんなそうやと思うけど、酒癖悪くって。飲みに行くと5回に3回はケンカしてたのが麻里子と尾崎。こう、髪引っ張り合って。そのおかげで出入り禁止になった店が何軒も。私とユミちゃん(キューティー)は止め役やったな。『まあ、まあ』って。」
千葉「それがあの遺恨に?」
関西「まあ、記憶失った状態でのことやからね。翌日には両方とも覚えてないんやけど。」
千葉「想い出の試合、というのは?」
関西「JWPの旗揚げ第2戦で、麻里子と2フォールカウントマッチやって、あの時はすごい緊張して、でもやったあとに『プラムもすごいよかった』と言われてるの聞いて、自分だけじゃなく、対戦相手もホメられるのを聞いてうれしかった。あの試合は自分の中で誇り。」

千葉「この中でこの2フォールカウント生で見た、という方いらっしゃいますか?」
予想に反して4~5人しか手を挙げず。

キューティー「復帰後に1回シングルやって、いい試合にしたかったんだけど、普通の試合になっちゃって。あと、2人で組んでデビルさんと福岡のタッグに挑戦した時、麻里ちゃんすっごく緊張して、前の日から『私がんばるから、一緒にがんばろうね。』とか何度も言ったりして。」
千葉「最後にメッセージを。」
キューティー「麻里ちゃん、すごい親孝行で、麻里ちゃんがいなくなった今、私たちが麻里ちゃんに代わって麻里ちゃんのご両親に孝行してあげたいな、と。」
関西「10周年の時にね、4人で旅行行こうとか計画してたんだけど、麻里子のケガとか重なって結局行けなくて。今ユミもいったけど、麻里子の親も、キューティーの親も、尾崎の親も、そしてウチの親も、みんなで孝行してあげたいな、と思う。そして今日来てくれたファンの人たちも自分達も、一緒に大きくなって行きたいな、と思う。」

最後にプラムのお母さんにリング上で関西から花束の贈呈。

休憩は約10分。もちろんインフォメーションコーナーもなし。


第3試合 オンリーギブアップバトルロイヤル(11人参加)

通常の入場式の曲に合わせて、全員がバラバラと入場。リング内は福岡・久住・本谷・宮口、関西・キューティー・デビル、尾崎・天野・大隅の3つに分かれ、バトル名人のボリショイが孤立。キューティーは関西の後ろに隠れ、尾崎は天野と大隅を盾にする。まず標的になったのは尾崎。しかし大隅と天野を手足のように使って尾崎は逃げまくる。天野の顔が笑っている。そしてデビルが標的に。全員がダイビングフットスタンプを浴びせ、関西がコーナーへ。これは逃げたが、違うコーナーから福岡がムーンサルトプレス、そしてついに関西もダイビングフットスタンプを敢行、苦悶するデビル。すかさず大隅がデビルの上に乗っかって、ストマッククロー(?)。デビルたまらずギブアップ。初の退場者となった。リング下に落ちたデビル、「私ここに何しに来たのぉ~?もう、イヤ」とボヤく。10人になった時点でリング内にイスを9脚持ち込みイス取りゲームの開始(BGMは千葉リングアナによる「ヒゲダンスのテーマ」)。あぶれたのは大隅。しかし大隅福岡に襲いかかり、イスごと倒す。久住が福岡に攻めかかるが、福岡はリバースフルネルソンで固める。福岡に「大隅!上から攻めろ!」とか言われて近づく大隅。しかしお尻を上にして固められている久住に顔を寄せると「くっさあ~。」福岡も手を放す。関西が「おならしたんか?」と聞くと大隅「おならしました。」久住「してません!」
久住、情けないような笑い出しそうな何ともいえん顔をして抗議。そこを福岡がバナナスプレッドに固めるとあえなくギブアップ。しかし技うんぬんより「おなら疑惑」による精神的ダメージの方が大きかったものと思われる。
尾崎と関西が対峙。デビルがリング下から「手を出すなよっ!」と声を掛ける。高まる緊張感。しかし大隅が関西の後ろからカンチョー。やはり大隅は予想がつかないというか規格外というか。みんながヘッドロックでつながると大隅、得意の「あっ!」で気をそらせる。みんながみんな引っかかったわけではないが、バランスが崩れて全員後ろにひっくり返る。
早くも10分が経過。まだ残りは9人。やはりOZが標的。本谷が大隅をキャメルクラッチに捕らえ、関西が「ようし、いくで~」とばかりにキックの態勢に入ると、大隅大声で「ギブアー~ップ!」
関西「なんや、お前!こわかったんか?」大隅、泣き顔でコクコクとかぶりを振る。
ここでボリショイが宮口、福岡が本谷を捕らえロープ渡り競演に挑戦。しかし福岡は一面渡り終える前に転落。
尾崎がまた標的になるが、本谷をワキ固めに捕らえ、ギブアップさせる。本谷負けたのになんだかうれしそう。最近の本谷はどこでハマるか全く目が離せない(ゴング風)。
関西が天野をロープに飛ばす。天野、飛びつき十字固めに。関西がこれを切り返して逆に腕十字に。10/10の再現かと思いきや、尾崎が関西の腕を十字固めに捕らえる。脱出した天野が関西の右足をヒザ十字に取り、関西ギブアップ。デビルに「なんでギブアップした?」と聞かれると関西、「こうやって両方にひっぱられるんやもん。」
キューティー、このスキにスルスルとコーナートップに。そして尾崎に延髄ニー。通常の試合でもこれで決まりそうなくらい強烈な一撃だったが、オンリーギブアップなので福岡とツープラトンでカベルナリア。首をドラゴンスリーパー風に固められ尾崎ギブアップ。
いよいよ残りはあと5人。天野が孤立。コマンドがジャイアントスイングで10回転。キューティーも続く。デビルが入ってきてやっぱりジャイアントスイング。さらに宮口が自分も目の回るほどの高速回転ブラックバスター。目が回った天野だが、このピンチをどうにか逃げ切り、逆に福岡を寝た状態からのヒザ十字に捕らえるとコマンド、宮口も加勢して福岡ギブアップ。
キューティーが天野を逆エビに捕らえるが、宮口裏切って逆にキューティーを逆エビに。天野とコマンドが加勢してキューティーもギブアップ、退場。
残り3人。宮口とコマンドは共闘の意志確認かハイタッチ。しかしコマンドはその腕を取ってワキ固め。不意を突かれて宮口ギブアップ。
2人になってコマンドと天野は大喜び。またも2人でハイタッチ。しかしコマンドのワナに天野は引っかからず。天野、攻撃しようとして足を負傷した様子。コマンドはそれを見て攻め込むが、これは天野のワナ。ヒザ十字に。コマンドなんとかロープエスケープ。「だましたなあ!」天野は相変わらずニコニコ。コマンドは天野をロープに振り、ビクトル投げ、しばし耐えた天野であったがとうとうギブアップ。最後はプラムの得意技でコマンド・ボリショイが優勝。

コマンド(24分29秒 ヒザ十字固め)天野


リング内にスタンドマイクが二本持ち込まれ、選手全員で“プラムの好きだった歌”「さよならの向こう側」を合唱。最後はプラムの入場テーマ「Don't Cry Angel」が流れ、全選手が四方にあいさつ。大拍手の中選手が退場し、選手会主催の「手作り興行」は無事終了。試合形式といい、全体の雰囲気といい、なんか「これぞJWP」って感じだった。これでいいんではないか、と思う。

試合前にはあまり書き込まれてなかったメッセージボードには試合終了後たくさんのメッセージが書き込まれた。



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