無我 96/10/7 Ebis303大会



「無我」の東京初お目見えはプロレス初使用のEbis303イベントホール。天井が低いため、グラウンド中心の団体しか使えそうにない
イスは見たところ1000以上置いてあり、立見もいたので 「超満員」。

まずはランカシャーレスリングの紹介と「無我」の1年間のあゆみを紹介するビデオの上映、続いて全選手入場式と東京初進出記念および藤波辰爾レスラー生活25周年記念セレモニー。週プロ・浜部編集長、竹内宏介日本スポーツ出版社社長に続き、招待された曙・小錦の2人も藤波に花束贈呈。新ガウンも贈呈。最後は25周年ということで25人のファン代表から一本ずつ花が贈られる。

次に藤波の解説による「スパーリング」。スパーリングというより基本動作の実演であったが、昔の新日の会場だ早く行けば藤原とかがこういうのやってたなあ、と昔を思い 出してしまう。しかしこうして見てみるとコーチのロイ・ウッドはさすがに動きが滑らかだが、練習生の方は投げひとつ 取ってみても「力に頼ってる」風あり。この「スパーリング」 はそこから先の試合がどんなものかを示すためにも欠かせないでしょう。


第1試合 正田和彦 vs 倉島伸行

5日にデビューしたばかりの新人対決。両者ともいかにも 「アマレス重量級!」といった体型。序盤は正田がポジションどりにしても関節技にしても優勢をとっていたが、ベリートゥバック1発(ジャーマンというより)で逆転した倉島が再度ベリートゥバックから腕ひしぎ。かなりの時間こらえた正田であったがとうとうギブアップ。

倉島(8分44秒 腕ひしぎ十字固め)正田


第2試合 ジョン・パトリック vs ジョセフ・グイラー

第1試合とうって変わってこの2人は細身。グイラーの両腕には色鮮やかなタトゥー。グラウンドの攻防でグイラーのヒジの傷から出血。グイラーも鮮やかな切り返しを見せるものの攻勢を取るには至らず、パトリックのクロスフェースでギブアップ。

パトリック(4分45秒 クロスフェース)グイラー


第3試合 キャッチ・オブ・ザ・ランカッシャー・トーナメント優勝決定戦
シェーン・リグビー vs 西村修

リグビー強し。ハーフネルソンやらアームストレッチといった「渋い」技でどんどん西村を追い込んでいく。もっともランカッシャー流の関節技は柔道のように一瞬にして極めるというよりグイグイ 絞るストレッチ系の方が多いため、西村もまだこらえることができたよう。10分を過ぎると西村は汗ダク。一方のリグビーは余裕の表情。張り手で挑発するリグビー。これにエルボースマッシュで西村反撃。ボディーにヒザを入れてのダブルアームスープレックス、そしてちょっと裏投げぎみのノーザンライトスープレックスの連打で西村逆転勝ち。カウントを入れる際にマットを叩かないロイ・ウッドのレフェリング(イギリス流)に皆一瞬3カウントとわからなかったよう。西村はトーナメントに優勝し、メインイベント出場権を獲得。

西村(19分45秒 ノーザンライトスープレックス)リグビー


第3試合の後、休憩。カメラマンでグラウンドが見にくいため、自席(実質4列め)を離れ、立見に。


第4試合 キャッチ・オブ・ザ・ランカッシャー・トーナメント3位決定戦
ダレン・マロニス vs ダレン・フレッチャー

この試合はマロニスが圧倒的に強かった。体格でも優ってたけど。最後は片腕を固めたままサルトで投げ、そのままブリッジして押さえ込み。 マロニス3位。旗揚げ時から参戦してる2人(リグビーとマロニス)はいいですね。

マロニス(6分14秒 フロントスープレックスホールド)フレッチャー


第5試合 ジョー・マレンコ vs シェーン・リグビー

うーん、なんかジョーの腹のあたりがちょっとダブついてる。さすがのマレンコ兄ももう歳かな?しかしながら試合は素早い動きの連続。リグビーもちょっと前に20分近い試合をこなしたとは思えない。で、最初は技術で圧倒していたように見えたマレンコだったが、早くも5分過ぎにスタミナが切れたのか動きが鈍くなる。ベリートゥバックで1度リグビーを投げたものの、2度目を切り返されてバックを取られる。4つんばいになったマレンコにリグビーは背後から足をこじ入れ、ひっくり返しての股裂き。マレンコがタップしてるのに「ギブアップ?」と聞き続ける田山レフェリー。マレンコ「YES!YES!!」と叫んでついにギブアップ負け。でも「番狂わせ」という感じはなし。

リグビー(6分23秒 レッグスプレッド)マレンコ


第6試合 藤波辰爾 vs 西村修

この試合はランカッシャースタイルではなくオールド新日スタイル。ブリッジ合戦もあればロープワークもあり。西村は早い段階からノーザンライトスープレックスを出して行く。この試合のハイライトシーンは西村の4の字固め。必死に絞る西村、こらえる藤波。ロープ に逃げるが西村外さない。田山レフェリーが懸命に両者の足をほどく。藤波立てず。しかしここで西村の足への攻撃が続かない。不用意にヘッドロックに行く西村、藤波はすかさずドラゴンバックブリーカー。藤波はスリーパー、そしてドラゴンスリーパーで追撃。何とかロ ープに逃れる西村。ここで藤波は両国で西村を仕留めたコブラツイスト。これで終わったら2ヶ月前と同じ、と思ったが西村こらえて何とかロープへ。しかし藤波は間髪を入れず三角絞めにとらえ、西村ついにギブアップ。藤波の三角絞めは「絞め」というより「腕ひしぎ」 に近い。(そういえば阿修羅原に勝ったときも「腕ひしぎ逆十字固め」と報道されてたような)

藤波(14分43秒 三角絞め)西村


全試合終了後に表彰式と藤波のあいさつ。「これで全部自分のやりたいことを見せたとは思ってません。しかし新日のレスリング、その裏にはこういった基本があって成り立っているんです!」

1000人以上の観客のうち、どのくらいの人間が藤波のやりたいこと をちゃんと理解して見ていたかは疑問がある。で、そういう人たちが現にランカッシャーレスリングを見て「面白い」と感じたかというと、それもやはりわからない。しかし藤波自身「これで全部ではない」と言っているわけであって、この日の興行のみを以って「無我」の方向性がどうのこうのとは言えないと思う。ただ前回北原・越中らが参戦した大会はパンフレットで「自分のやりたいこととは少し違う気がした」と語っているので、今回の方が「やりたいこと」に近いのであろう。個人的にはこっちのスタイルの方が全然いい。

「無我」は「藤波の、藤波(とその仲間)による、こういうレスリングを好きな人のための興行」かもしれない。



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